第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
「千鶴ちゃん、任務中なんだ。下手に声をかけたら夢主(姉)ちゃんの命にかかわる。我慢してくれるかな。」
「すみません」
やっぱりあれは夢主(姉)ちゃんなんだ。
任務中…
お店の前まで歩が進めば、沖田さんは夢主(姉)ちゃんの前を素通りする。
いつも同じ部屋で寝ている夢主(姉)ちゃんのことを知らない人のふりをするのは、少し気が引けたけれど…
その時、
「お佳ちゃん!新選組にぶつかったりしたら斬られてしまうよ。お店の中にひっこんどき。」
お店の奥から、おばさんの声が聞こえてきて、お佳ちゃんと呼ばれた夢主(姉)ちゃんは、
「は~い」
と言って、目の前にいた私を見向きもせずに素通りしてぱたぱたとお店の中へ入ってしまった。
その一連の様子に、思わず立ち止まってしまった私の腕を、沖田さんはぐいっと引っ張って歩き出す。
「まったく君って子は」
そう言いながらぐいぐいと引っ張られて、少し歩いたところでその腕を離された。
そして、
「はぁ…。そんな顔しないでよ。仕方ないじゃない。あれが京の人達の僕達に対する反応なんだから。」
私、どんな顔をしていたんだろ?
「あの…私」
「夢主(姉)ちゃんの態度にびっくりした?」
私はこくりと頷いた。
なんと表現していいのかわからない感情で、うまく言葉が出てこない。
「あはは。君にあの任務は無理だろうね。すぐに顔に出ちゃう。それに…大丈夫だよ。お芝居だと思えばいいから。」
沖田さんはけらけらと笑っていたのだけれど…私はなんだか気分は沈んだままだった。