第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
今日は巡察に同行させてもらえる日。
沖田さんの隊にお世話になることになった。
まだ少し咳をしている沖田さんの体調が気になるけれど、お熱もないみたいだし大丈夫なのかな。
沖田さんはあまりご飯を食べないから、ちゃんと見ていないと体調が悪くてもお酒を飲むだけで全然食べていなかったりする。
そんなんじゃ早く治りませんよって、少し強めに言ったら、肩をすくめて「はいはい」なんて言って食べてくれたけれど。
いつも意地悪なことを言って…すぐに「斬っちゃうよ」なんて言ってくる沖田さんだけど…
たまに「ありがと」なんてお礼を言ってくれたりもする。
池田屋の騒動の時に倒れて以来、お薬をお部屋に持っていくのは私の役目になってお話する機会も増えたら、沖田さんは本当はとっても優しい人なんじゃないかなって思えるようになった。
隊を率いて歩く沖田さんの横にいる私は、ちらりとその横顔を覗き見すると、相変わらず注がれる町人の冷ややかな視線にも気にしていない様子で…
やわらかい表情を崩さずに、目だけは鋭く前を見つめている。
「なに?僕の顔に何かついてる?」
ちらりと見ただけなはずなのに、すぐにそう言われてしまって、私はあせってしまった。
「い、いえ。なんでもないです。」
「そう?」
焦ったせいで少しドキドキしてしまった。
父様を探しに来てるのに!私ったら違うことを考えてたらせっかく巡察に同行させてもらってる意味がないじゃない!
そう自分に戒めて、周囲のお店をきょろきょろと見渡した。
ふと目に飛び込んできたのは…
「毎度おおきに。」
お客さんにそう声をかける、お団子屋さんの女の子。
「あ!」
思わず声を出そうとして、沖田さんに止められた。