第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
開けかけてた襖を閉めて、私は土方さんの前に座った。
「お前に人斬りなんてさせたかねぇんだ。わかるか?」
「…はい。」
「ただ、お前の腕は確かだ。平助や新八からこれでもかってくらい聞かされてるからな。それに、総司や斎藤もお前の剣筋には舌巻いてんだ。それはわかってる。だが…」
「真剣の重さについて考えてました。私がいくら腕があると言ったって、木刀での打ち合いのことで、実際に実戦経験なんて、池田屋とこの前の大阪までの追討の時のみです。でも…私は!」
「もっと強くなりてぇし極めてぇ、か。はぁ…お前、一瞬でもこの新選組に殺されかけたの覚えてるか?」
「そりゃ覚えてますよ。あの日のみんなの殺気は今でも忘れられません。超怖かったし!でも、小姓になったその日から、私は新選組の一員だと思って過ごしてきました。…私は土方さんの小姓で…新選組の一員、ですよね?」
私がそう言うと、土方さんは腕組したまま小さくため息をついて、目を閉じた。
そしてゆっくり目を開けて、わたしをじっと見据える。
「ああ。お前は俺の…新選組副長の小姓だ。手放すつもりなんざねぇよ。」
土方さんの声は、低くて重みがあって…思わず背筋が伸びてしまう。
そして、こんな会話をしているというのに…なんだろうドキドキする。
思わず何も言葉がでてこなくなって、土方さんをじぃっと見つめてしまった。
「お前が抱える重みなんざ俺がまるごと抱えてやるさ。好きにやればいい。ただし、無理はするな。」
土方さんは表情を緩めてそう言うと、再び机に向きなおして書き物をはじめた。
「お、お茶煎れなおしてきますっ」
部屋を出て襖をしめて、勝手場までダッシュする。