第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
夕飯の後、再び土方さんの部屋で書類の整理をしていると、ふと書き物をしている手を止めて、土方さんがこちらを向いた。
「夢主(妹)なんかあったか?」
そう言う土方さんは少し笑っている。
「いえ。なんでもありません…ってなんで笑ってるんですか?」
「いや、悪りい。お前が何か考えてる時はたいてい百面相になるな、と思ってよ。なんだ?あったんだろ考え込むようなことが。話せるなら話してすっきりしちまえ。」
百面相になってたのか!私ったら!!
そんな考え込んでたかな。
土方さんの手がぽん、と頭に乗った。
そしてぽんぽんと軽くなでるように叩く。
土方さんの手の大きさと体温と…頭に乗った手の平の重さが心地よくて、私はこれが大好きだ。
そしてとっても安心する。
考え込むこと…
お姉ちゃんは真剣を「重い」と言った。
それは刀の重量のことじゃないってことくらいわかるよ。
私は…
確かに重いけれど、私はそれを担ぐだけの気力とか覚悟とか力がもっと欲しいって思うんだ。
「私は!重さを感じながらその重さに耐え抜きたい。そしてその重さに生きたいです!」
なんの前置きもせずにそう言い放ってしまった私に、
「何の話だよ。ったく。」
と、土方さんは苦笑しながらお茶を一口すすった。
「あ!お茶もう冷めちゃってますよね。新しいの煎れて来ます!」
立ち上がって部屋を出ようとする私に、
「重さか。何の重さかあらかた察しはつくが…。夢主(妹)、お前はそこまで背負いこまなくたっていいんだ。もっと能天気にしてろ。」
そんな言葉がかけられて、思わず襖を開ける手を止めてしまう。
「でも…私はもっともっと強くなりたいし極めたい。それにはちゃんと重みも感じなければいけないと思うんです。」
「はぁ…。やっぱり刀の話か。ちょっと座れ。」