第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
「久しぶりだね!!本気で行っていい?」
こんな風に一緒に稽古するのなんて、はっきり言ってこの世界に来る直前のあの日以来。
しかもお姉ちゃんと木刀で手合わせするのは初めてだ。
「どうぞ~!」
にっこり笑って木刀を構えるお姉ちゃんの様子は、あの日となんら変わりない。
いつも向かい会うと、竹刀を構えてにこりと笑う。
そんなお姉ちゃんに初めて勝ったのは12歳の頃だった。
「「お願いします!」」
向き合ってお辞儀をして、私達は構えなおした。
カランカラン
腕から木刀がはじけ飛んで、体勢を崩して地面に転がったお姉ちゃんの眉間擦れ擦れの所で木刀を寸止めする。
残暑から秋へ変わる少し冷たい風がふきぬけて、高く結い上げた私達の髪の毛を揺らした。
「やっぱり夢主(妹)には敵わないね。それに一段と強くなったんじゃない?全然動きが見切れなかった。」
「お姉ちゃんこそ、相変わらず隙はないし、方向が読みにくいし…ま~私の勝ちだけどね!」
「さすがに幹部と張り合うだけあるわ。」
そういえば、ここ最近の稽古は実戦を考えてのものだったから、「剣道」のような稽古はしていなかった。
すっかり忘れていたけれど、こんな風にぎりぎりまで追い詰めてとどめで寸止め…なんて、ここに来てから覚えたようなものだ。
「ごめんっ!ついいつもの癖で!」
姉をとどめをさす寸前まで追い詰めていたことに、今更ながらびっくりする。
これじゃまるで初日に手合わせをした時の沖田さんだ。
「ううん。なんか関心しちゃった。一本とられるどころか、やられるとこだった〜。」
あははと笑いながら言うお姉ちゃんに、私はほっと胸をなで下ろした。