第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
昼の巡察の報告を聞き終えて、土方さんが書き物にふける昼下がり。
頼まれていた書類の整理を終わらせて、相変わらずいつ休んでるのかわからない土方さんに濃いめのお茶を出してから、壬生寺の境内へ向かった。
しんぱっつぁんと平助が、隊士募集の為に江戸へ行ってしまっている為、一人で稽古をしている。
沖田さんと稽古をすれば、いつのまにやら手合わせになってしまって、鬼の形相をした土方さんに怒鳴られるまで打ち合いをしてしまうから…沖田さんとの稽古は禁止されてしまった。
斎藤さんとの稽古はすごく充実したものになるからお願いしたいところだけれど、江戸へ発った幹部がいない分、斎藤さんは忙しそうで頼みづらい。
やっぱ、平助としんぱっつぁんとの稽古が一番楽しいな~。
早く帰って来ないかな〜。
いないとさびしいな。
空き時間に稽古をしていると、最近は他の隊士さんもちらほらやってきて、私に稽古をつけて欲しいと言ってくれたりする。
土方さんにそのことを言うと、幹部が誰かその場にいれば稽古をみてもいいことになった。
幹部がいるなら、私が稽古をつけてもらいたいところなんだけど。
でも、大好きな剣術の稽古をこれでもかっていうくらい毎日できて、さらには稽古をつけることができるなんて、すごく恵まれていて嬉しい。
それに、あの歴史上の剣豪達の中にいるなんて夢のようだ。
真剣を振るっている人達は、やっぱり私達の時代にいた「凄腕」の人達と格が違う。
一振り命がかかる。
自分の命だけじゃなく、相手の命も。
重くのしかかってくる命を前にしても、剣術をもっと極めたいと思うし、これからもっと刀について知りたいと思えた。
「夢主(妹)。私と手合わせしてくれないかな。」
素振りをしていると、後ろからお姉ちゃんの声がした。
もう夕方な時刻だけど、まだ明るい。
「こんな時間にめずらしいね!もちろんいいよ!」
最近はお姉ちゃんになかなか会わない。
夜は寝てる間に帰ってきて、朝は起きるといなかったりする。