第2章 不安と殺気と事情聴取
「…うーん…」
その声に二人ははっと少年の方を向いた。
「あ、おはよう。」
夢主(姉)が優しく声をかける。
「あ…私…」
「おはよう少年!お互い助かるようにがんばろー!」
夢主(妹)も明るく声をかけた。
これからこの少年とも協力しなければいけない。
「…おはようございます。…夢…ではないんですね。」
少年は沈んだ声でうつむく。
「残念だけど…あ、それより、ちょっと話しておきたいことがあるんだけど―――」
夢主(妹)がそこまで言ったとき、ゆっくりと襖があいて、 人の良さそうなおじさんが顔を出した。
「ああ、目が覚めたかい。」
優しそうなその人は、井上さんという名前らしい。
「すまんなぁ三人とも。こんな扱いで…。今、縄をゆるめるからちょっと待ってくれ。」
井上はそういうと三人の縄を順番にときはじめた。
手を縛っているもの以外だったけれど。
「ありがとうございます。」
夢主(姉)がにっこり笑って井上をみる。
「あ!ありがとうございます!」
それに少年が続いた。
それをみて、井上は少しだけ笑った。
「頬の傷、そこまで深くなかったから痕は残らないと思うのだけどね。」
井上はそう言って夢主(妹)の頬に手を添えて気遣う。
「あ・・・」
頬に手を当てて昨夜の事を思い出し、少しだけ身体が震える気がした。
「ちょっと来てくれるかい?今朝から幹部連中で、あんたらについて話し合ってるんだが…。あんたらが何を見たのか、確かめておきたいってことになってね。」
…その前に少年と話しておきたかったな。
夢主(妹)は眉間にしわを寄せて考え込んでいた。
「わかりました。いきましょう。」
夢主(姉)が相変わらずの笑顔で井上に応えた。
少年は不安そうな顔をしている。
夢主(妹)に至っては眉間に皺だ。
そんな三人の様子をみて、井上が苦笑しながら言った。
「そんなに心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気のいいやつらだよ。」
「はあ…」
少年は訝しげにその話を受け、井上について歩き出しす。
夢主(姉)と夢主(妹)もその後に続いた。