第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
九条河原での待機が決まった頃、山崎が土方のもとへ駆け込んできた。
「副長。会津藩主力の兵は、蛤御門を守っているようです。」
「ここは予備兵か。わかった。引き続き情報収集を頼む。」
腕を組んで山崎の話を聞いていた土方は、遠くを見つめながら目を細め、表情が一層険しくなった。
「承知致しました。副長、ひとつ許しを得たいのですが。」
「なんだ、言ってみろ」
「・・・夢主(姉)君を屯所からこちらへ呼んでもよろしいいでしょうか。」
「わかった。この状況だし、いち早く情報が欲しい。夢主(姉)への指示はお前に任せる。」
「ありがとうございます。」
言い終えると、山崎はまたどこかへ走り去った。
そっか・・・千鶴とお姉ちゃんは屯所にいるんだよね。
山崎君、お姉ちゃんのことすごく信頼してるみたいだな。
私も頑張らなくちゃね。
たらい回しな上に予備兵として待機・・・そんな扱いに、隊士達の表情にも、少し体力とは違う疲労が見える。
夢主(妹)は、ぎゅっとこぶしを握り締めて気合を入れると、頭にぽん、と土方の手が乗った。
「今のうちに休んどけ。」
土方のその言葉に、
「大丈夫ですよ?」
と、怪訝な表情を返した。
「いざとなったら叩き起こす。いいから少し休め。」
半ば無理やり座らされた夢主(妹)は、
すぐに戦いがはじまるかもしれないし・・・まだまだかもしれない。
私がフラフラして怪我でもしちゃったら、土方さんはきっと自分を責めちゃって、もう連れて歩いてくれないかもしれない。
ここはちゃんと休んでおこう。
それが一番だと思い、ぎゅっと目を無理やり閉じて休むことにした。