第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
一方・・・
伏見奉行所へたどり着いた新選組への扱いは散々なものだった。
そんな所司代の役人の態度に皆の苛立ちが募る中、夢主(妹)は苛立つよりも呆れていた。
いつもだったら真っ先に怒鳴り散らしてまわりそうな土方が、辛抱強く我慢している姿を見て、
うーん・・・。役人てどの時代もたらい回しが得意なんだなぁ・・・
なんて、よく朝のニュースで流れていたコメンテーターの言葉を思い出しながら、ぼーっと考えていた。
それにしても所司代の対応は酷すぎる。
こちらには書状もあるというのに。
夢主(妹)は、あまりにも偉そうに拒む役人の背中にむかって、こっそり「べー」と舌を出しておちょくってみる。
そんな夢主(妹)をはははと笑った原田は、
「俺達の扱いなんざこんなもんだ。下手に騒いで会津の顔つぶしちまうわけにもいかないしな。っつーか夢主(妹)ありがとな。気が和む。」
と言って、夢主(妹)の頭をぽんぽんと叩いた。
「むー・・・」
夢主(妹)は、この状況の打開策はないものかと、脳を働かせながら土方のもとへ戻る。
「団子みてぇな顔すんな。行くぞ。」
厳しい表情をしていた土方は、夢主(妹)の両頬を軽くつねると、表情を緩めた。
そして少し笑ってから、踵を返して歩き出した。
会津藩邸へ向かってから、九条河原へ。
この時代の人って足強いよね・・・
さっきから歩きっぱなしなのに、速度落ちないし。
体力には自信がある夢主(妹)にとって、ひたすら歩き続けることは苦ではなかったが、車も電車もないこの時代の人達のいろんな意味での強さを実感していた。
っていうか電話って便利だなぁ。
電話があれば、伝達が行き届いてなくたって確認すぐできるし。
それを考えたら、私って随分ぬるい世に生まれたな・・・
などと、文明の発達について、いろいろ考えを巡らせながら夢主(妹)は土方の少し後ろを歩いていた。
九条河原でも会津藩士達に伝達は行き届いておらず、新選組に居場所は無かった。
この状況に、とうとう永倉が声を荒げた。
そうだそうだ!しんぱっつぁんもっと言っちゃえ!
夢主(妹)は声こそ出さなかったが、そんな永倉の背に心の中でエールを送る。