第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
あーもう!やっぱり山南さんネガティブオーラ大全開じゃん。
平助君固まっちゃってるし。
そんな自虐ネタ言っても誰も笑えないのに。
夢主(姉)は、とりあえず部屋の空気をかえようと、その場へ飛びこんで行こうとした。
「あの薬を使えば私も・・・」
あと一歩で広間、というところで、そんな山南の言葉が聞こえてきて、夢主(姉)は飛びこもうとしていた足を止めた。
そして、足を止めたと同時に、藤堂の怒鳴り声が聞こえてきた。
「本気で新撰組に行くとか言ってんのかよ!?」
夢主(姉)は最大限に気配を殺して、一歩下がると、入り口の影へ隠れて様子を伺うことにする。
薬?
なんだろう?石田散薬?
平助君怒ってるし違うよね・・・
しんせんぐみ?ここって新選組じゃないの?
「あれは結局失敗したじゃん?だから総司と一君が殺すことになったんだし!」
ん?
総司と一君が殺す・・・?
失敗・・・?
空気的にこれはやばい会話なんだろうってわかるけど・・・
「俺は見たくねえよ・・・そんな山南さん・・・」
藤堂は小さく呟いた。
やばい薬なのかな?
夢主(姉)は、「ここには近づくな」と土方から念を押されて言われていた、前川邸の一角を思い出す。
ただの直感だが、今の話と、その場所は関わりがあるのだろうと感じた。
そして、自分達がこの場所に連れてこられる直前の出来事を思い出す。
総司と一君・・・失敗・・・
今は中に入らないほうがよさそう。
これって聞いちゃダメなやつだ。
夢主(姉)はそう思って戻ろうとしたその時、
「――申し訳ありませんが、今の話は他言無用でお願いしますね、夢主(姉)君?」
山南の刺さるような声が聞こえた。
あ・・・やっぱりばれてた。
「はぁい」
得意の場違いな明るい声を作って返事を返して、夢主(姉)は広間へ入っていく。
驚いた顔をした藤堂と、表情は変えずに夢主(姉)を見据える山南。
そんな二人に、夢主(姉)は飄々と特に気にしたそぶりは見せずに茶を渡す。
「ちょ!夢主(姉)、今の話・・・」
慌てた様子の藤堂に、夢主(姉)はにこりと微笑むと、そのまま広間を出た。