第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
いつだか沖田が自分とは違う雰囲気で夢主(姉)と話す姿を見た事があった。
会話の内容も聞こえず、仲良く話をしていたわけではないようだったが、その雰囲気は、自分に対する物と違っていて、なぜかズキリと胸が痛んだことを思い出す。
そして薬を持って行くと、時折寂しそうな表情もする。
もしかしたら夢主(姉)ちゃんに来て欲しいんじゃ?と思って再び胸にちくりと何かが刺さったことも思い出した。
その痛みの原因はよくわからないけれど・・・夢主(姉)ちゃんは沖田さんが苦手・・・なのはなぜなんだろう?
千鶴がそんなことを考えて返答に困っていると、夢主(姉)はにこりと笑って、
「ね?」
と、念をおす。
「じゃ、じゃあ、行ってくるね?私も少し心配だし・・・」
先程涼んでくる、と広間を出て行った沖田のことが、実はずっと千鶴は心配だった。
でも様子を見に行っていいものか、出陣できずに思うところがあるのだろうと、近づけなかった。
夢主(姉)の後押しに、千鶴はいろいろと考えるのを止めて部屋を出ると、中庭へ急ぐことにした。
夢主(姉)は千鶴の背中を見送ると、ふぅ、とひとつ溜息をこぼし、広間へ向かう。
最近、山南の様子は日に日にぴりぴりとしたものになっている。
それに加えて、今日の出陣と来ているから、夢主(姉)は少し心配だった。
茶を煎れて、広間へ向かう。
広間に入る手前で、会話が聞こえてきた。
それは、出陣から外されてふてくされている藤堂を優しくなだめている山南の声。
ああ、よかった。山南さん優しいモードだ。
夢主(姉)は、そんな山南の声色に安心をした。
しかしすぐに、
「君は傷が癒えればすぐに表舞台へ戻れるでしょう。それに比べて私には日陰者の道しか残されていません。」
山南のそんな自虐発言が聞こえてきた。