第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
かなり早急に出陣準備を済ませ、隊士達は屯所を出発した。
ほとんどの隊士が出て行った屯所は、先ほどの喧騒とは打って変わって静まり返っている。
がらりとした屯所に残った千鶴と夢主(姉)は、他にすることもなく部屋で待機をしていた。
そういえば夢主(姉)ちゃんと二人きりになるのなんて久しぶりだな。
ここへ来てはじめのひと月は、夢主(姉)ちゃんと二人でこの部屋にこもりきりだった。
なんだか懐かしい。
千鶴がそんなことを思っていると、
「千鶴ちゃんと二人になるのなんていつぶりだろうね。」
同じことを思っていた夢主(姉)から言葉をかけられた。
お互いに、最近どう?だなんて少し他人行儀なやりとりをした後、夢主(姉)はこんなことを千鶴に言った。
「あ!ねぇねぇ、そういえばさ、沖田さん最近どう?」
千鶴は、毎日沖田の部屋へ薬を届けに行っている。
池田屋から帰ってきた後数日は看病もしていた。
「よくなってきてると思う。相変わらずお薬は飲んでくださるまで時間がかかるけど。」
苦笑しながら沖田の様子を話す千鶴を見て、夢主(姉)は少しにこりとして、
「さっき、中庭に沖田さんがいたんだけどさ・・・」
と言えば、千鶴は少し曇った表情になった。
「今お体を冷やしすぎるのはよくないのに。」
ぽつりと千鶴は呟く。
「千鶴ちゃん行ってあげて?なんか寂しそうだし。」
「え?あ・・・きっと皆さんと同行できなくて沈んでらっしゃるのかな。私より夢主(姉)ちゃんの方が話しやすいんじゃ・・・」
「えーぜんぜん。私あの人苦手だもの。」
そんな夢主(姉)に、千鶴は少し驚いた。
沖田さんは少し・・・たまにびっくりするくらい意地の悪い所はあるけれど。
それよりも夢主(姉)ちゃんって苦手とか、そういうのあるんだ。