第1章 季節はずれの桜の木
殺されかけたにも関わらず、震えもせずに何かを思案している様子の夢主(妹)に、楽しげにしている男が興味深い玩具を見つけたような笑顔で声をかけた。
「君さ。あのヒトたちの攻撃をかわしてたよね?普通なら勢いに気圧されてそのままばっさりなんだけど。しかもそれ・・・竹刀?すごいね。」
にっこり微笑む彼の表情を、夢主(妹)は訝しげに見返す。
…ほめられたの?なんだか笑顔が怖いけど・・・
そう思っていれば、
「でも…だからこそ、やっぱりここで始末すべきだと思うな。一君もそう思わない?」
なおも楽しそうな表情のまま夢主(妹)を見据えていた。
その言葉に、一君…という男も、ちらりと夢主(妹)を見る。
視線は、夢主(妹)の手元。一瞬見て、また目をそらす。
夢主(妹)ははっとした。先ほどから竹刀を握りっぱなしだったことに気づく。
夢主(妹)は警戒されないよう、その隙にさっと竹刀をおろした。
…さっきのあの白髪の化け物みたいな人達も、新選組だったよね…
暗闇でも目立つ袖の羽織は、現代では有名だ。新選組の何よりもわかりやすい目印だった。
それに、今の言葉。何故か私たちまで殺そうとしている。
…私たちは、見てはいけないものを見た…?