第1章 季節はずれの桜の木
そこまで考えついたその時・・・新たな男の登場を知らせるかのように、強い風が吹いた。
誘導されるようにそちらを向けば、鋭い瞳でこちらを見据えた人物が居る。
三人は思わず見とれた。
---背を向ければ斬る
という、脅しではないとわかる声色に、思わず三人は同時にコクコクとうなずくしかない。
それを見て男は、困惑をしているようだった。
しかしそれも一瞬で、次の瞬間に眉間に皺を寄せた。
はぁ・・・とひとつ、ため息を吐くと、三人に向けていた刀を鞘に納める。
あっさりと刀から解放されて、拍子抜けしたのは三人だけではないようだ。
「あれ?いいんですか?土方さん。さっきの見ちゃって気づいちゃってるみたいですよ?この子達。」
先程から何故か楽しげにしている男は、不思議そうに目を細める。
…土方さん?やっぱり新選組だ。さっきの見ちゃって気づいちゃってるって・・・やっぱり、あの白髪の・・・だよね?
さらにいろいろ考え始めた夢主(妹)の顔を、土方と呼ばれた男は見逃さなかった。
そしてその夢主(妹)を抱えるように抱いたまま、何を考えているのか場違いな涼しい顔をしている夢主(姉)にも目を向けて、さらに眉間に皺を寄せた。
「・・・屯所に連れて行け。聞くのはそれからだ。」
そう言って、二人とはまた違う雰囲気をした少年にも目を移すと、
「あの!私・・・」
と、その少年は声を発した。緊張からか声のトーンが少し大きい。
「・・・とにかく来い。」
三人は抵抗する気力もなく、あっという間に腕を縛られ、連れて行かれるのだった。