第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
「夢主(妹)」
自分の不甲斐なさにあけくれて、後悔ばかりが脳裏に広がって、まわりの声すらも聞こえないほど考え込んでいた夢主(妹)を呼ぶ声がした。
振り返ると、夢主(姉)が微笑んでいる。
「おつかれさま」
優しい姉の声。
お姉ちゃん…私…私は…
さっきまで堪えていた涙とはまた別の涙があふれそうになる。
そんな夢主(妹)を、夢主(姉)はそっと抱きしめると、
「大丈夫・・・夢主(妹)の持ってる知識全部出したって、そうそう事態は変わらないわ」
小さな小さな声で、夢主(妹)に言った。
なんでわかったんだろう。
私が今考えていたこと…
お姉ちゃんは違うところにいたはずなのに…
夢主(妹)は黙ったまま姉の顔を見ると、夢主(姉)はさらに微笑んで、
「夢主(妹)、無事でよかった」
そう言った。
今度こそ泣きそうな夢主(妹)の目に、今は会いたくなかった人物が映る。
入れ替わるように、夢主(姉)はその場を去った。
土方の顔を見ないように、夢主(妹)は俯く。
「夢主(妹)」
呼ばれる声にも、下を向いたまま返事をする。
ぽん、と頭の上に手が置かれた。
「新八から聞いたぜ?あいつはすげえって大騒ぎだ。」
その言葉に、恐る恐る顔をあげると、この状況に似合わない優しい顔をした土方がいた。
「新選組の為によくやってくれた」
夢主(妹)の頭に手を置いたまま、土方はそう告げる。
涙を堪えるのは何度目か。
さすがにもう堪える力は残って居なくて、夢主(妹)の大きな瞳から、つーっと一筋、涙がこぼれた。
土方は、その涙を指でぬぐうと、
「置いて行って悪かった。これからは常に俺と来い」
そう言って、再び隊士達の所へ戻って行った。