第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
「夢主(妹)君…君をこんな戦いの場へ巻き込んでしまってすまない…」
討ち入り終了後、夜が明けるまで新選組はその場で待機していた。
負傷者の包帯を巻く夢主(妹)に向かって、近藤は苦しそうな表情を向ける。
違うよ近藤さん。私はそんな言葉聞きたくない。
夢主(妹)は近藤のそんな表情を見て、胸が苦しくなった。
そして…土方の顔を見るのが怖かった。
土方も近藤と同じように戦うことになった夢主(妹)に対して、苦しい表情をするのだろう。
土方からそんな顔をされて、はたまた謝罪の言葉なんて言われたら…
夢主(妹)はそれが怖かった。
決めたんだ。
私は新選組の一員になるんだって。
それなのに、謝られてしまっては、部外者だと言われたようなものじゃん…
そう思うと、土方の顔など今は見る勇気がなかった。
「お前はよくやったぜ?その腕は本物だな」
わしゃわしゃと頭をなでながら、永倉が言った。
そんな永倉の言葉に、夢主(妹)は涙がこみ上げてくる。
「だから近藤さん、そんな顔しないでやってくれよ」
永倉は苦しそうな顔をする近藤に向かって、そう続ける。
「日頃の誠実な稽古の成果であろう。」
斎藤も、永倉に続いて言葉を紡ぐ。
やば・・・泣きそう。
でもだめだめだめ!
ここで泣いたら女が廃る!
夢主(妹)は込みあげてくる涙を必死に堪えた。
「安藤と新田はどうだ?」
「…意識がありません」
「そうか…」
夢主(妹)の耳に、土方と夢主(姉)の声が聞こえてきた。
安藤さんと新田さん…重症って聞いた…平助も出血がすごいって。
それに…奥沢さんが死んじゃったって…
自分が嫌な思いをしない為に、私は池田屋だってことを知らないふりをした。
私が…
もっと早く、池田屋だよって伝えてれば違った?
誰も死ななかったかもしれない…
私が斬ったあの浪士だって…
それに…
沖田さんが喀血するって覚えてたら、もっと…
私がもっと…
もっともっと…