第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
その背中を目で追いかける。
斎藤さん達はどれだけの重みを背負って生きているのだろう。
そう思った。
私が殺してしまったかもしれないあの浪士にも、家族があった…恋人がいたりするんだろうな…
でも…
でも…
私まだ死ねないし!
ごめんねあの浪士!
っていうか斬りかかってきたあの人が悪い!
そんな思いにたどりついた時、
「ご苦労だった。先手を打てるのはお前の手柄だ。」
土方の声がした。
「それから…刀、ちゃんと拭いとけ。錆びたら使いもんにならなくなる。」
そう言いながら、土方は懐紙を出して手渡した。
眉間のシワは消えている。
夢主(姉)はいつものように笑みを向ける。
土方はそんな夢主(姉)に苦笑しながら、
「さて、腰の重てえ役人共へ、新選組の副長が直々に挨拶をしておく」
と、残った数名の隊士に告げた。
「山崎さんが後ほど合流すると思います。私は…」
「まだ走れんなら、斎藤達を追いかけて池田屋へ行ってくれ。」
「行ってきます。」
にこり、とひとつ…
笑みを土方へ向けて、夢主(姉)は、斎藤と原田率いる隊まで走った。
「お姉ちゃんが笑ってると、安心するんですよね」
いつか夢主(妹)はそう言っていた。
だったら、夢主(姉)をすぐにでもお前の居るところまで行かせる。
結局、戦地へ放りこむことになるなら、連れて歩いときゃよかった…
再び眉間にシワを寄せて、土方は今頃役人が悠々と列を成しているでだろう大通りに出るべく歩き出した。