第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
はあはあはあ・・・
さすがに屯所から池田屋まで全力で走るっていうのは体力がもたない。
しんぱっつぁんと同じくらい体力自慢できると思ってたんだけどな…
肩で息をしながら、夢主(妹)は池田屋のすぐ手前の民家の陰で足を止めていた。
とにかく息を整えないと、突入したって刀振るう体力なくなる…
夢主(妹)は、池田屋からわずかに聞こえる怒号を前に、必死で息を整えていた。
そして、背負っていた山南から預かった隊服を風呂敷から取り出す。
これを着たら、もう戻れない。
完全に私は新選組と関わって生きていくことになるんだ…
確か…武士が切腹をする時に着る裃の色を使ってるんだったっけ?
なんか本で読んだような・・・
ってことは、覚悟の色ってことだよね?
山南のものだから、夢主(妹)が着るには少し大きいが、襷をすればなんとか動けそうだ。
ふぅ、とひとつ、大きく深呼吸をして、いざ参ろう…そんなことを思った瞬間…
タタタタタ――と、千鶴が池田屋の中へ飛び込んでいくのが見えた。
「ちょっ!」
夢主(妹)はその姿を追いかけて池田屋へ走った。
中に入れば、血の匂いでいっぱいだった。
「―――オエっ」
おもわずむせてしまう。
真っ暗な部屋に、刃の音が鳴り響く。
「畜生!手が足りねえ!」
永倉の声が聞こえた。
「しんぱっつぁん!!!」
どこにいるのかわからない永倉を夢主(妹)は大声で呼ぶ。
「夢主(妹)か!今千鶴ちゃんが総司のいる二階に行った!二階は総司しかいないんだ!行ってくれ!」
刀を振るう音と共に、永倉の声が聞こえる。
「わかった!」
階段を上ろうとした瞬間、後ろから斬りかかってくる浪士の姿が見えた。
素早く体を翻して、その刀から逃れる。
夢主(妹)は刀を抜くと、なおも振りかぶって斬りかかってくる浪士の胴を
斬った。
それはほんとに一瞬で一撃だった。
浪士はその場に倒れる。
何かを考える間もなく、他の浪士が夢主(妹)を狙う。
それを永倉が斬り伏せた。
「夢主(妹)!今は考えるな!行け!」
永倉の言葉にはっと我にかえると、夢主(妹)は階段を駆け上った。