【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第3章 どうやら夢じゃないらしい。
「のぶ……なが?」
耳を疑わざるをえなかった。
「のぶながって、あの?」
もう一度問うた。もちろん、何かが変わるわけではない。
のぶながといえば、由里に思い当たるのは、有名なあの、一人だけである。
由里の独り言を尻目に、彼らは続ける。
「信長様、よくぞご無事で……この方は?」
「知らん……寺の坊主の遊女か何かであろうが、こやつに助けられた」
「そうですか……あの、お名前を教えていただけますか?」
先ほど登場したばかりの男性は、きれいな顔立ちで、なきぼくろが印象的だった。
そして何よりも、「ニコリ」という擬態語が、似つかわしいその笑顔である。
でも、由里は騙されない。
否、騙されたくないのだ。
「名乗るなら、自分が先にって言わない?」
平常心、平常心。
由里はそう心に言い聞かせながら、強がって、笑って見せた。
「っ……大変失礼しました、私は石田三成と申します。信長様の右腕である秀吉様の元で、側近を務めております」
また、その笑顔だった。
(あ、かなり男前)
その笑顔で騙されないぞと思いつつ、由里は自分の頬が火照るのを感じた。
「で、貴様、名は」
「……由里よ。国元由里」
信長、と呼ばれるその男は眉をひそめた。
「ほう……苗字を名乗るとは、さらに奇怪な遊女だ」
「いけませんか?ていうか遊女じゃないし」
遊女、なんて言葉と無縁に生きていた由里は、一瞬理解できなかったが、もちろん憤慨ものである。
自分は、曲がりなりにも、財閥社長の娘なのだと。
「くくく…全くけたたましい女だ。俺は、織田のぶ……」
「あ、貴方はいいや」
(悪い予感しかしないし)
「なんだと……?」
ピリリと寒気にも似た感覚が背中を伝う。
……が、気にしない。