第1章 今日は今日の風が吹く
服を着替えて朝食を食べていると、お兄ちゃんは眉をハの時にして私を見る。
それは、私を心配してくれている時のお兄ちゃんの顔。
「大丈夫。だって、お兄ちゃんがいてくれるから。」
本当に、心からそう思ってる。だから心配なんてしないで欲しいのだけれど…。
「そうですか?それならいいけど…。」
どこか釈然としないといった顔でご飯を食べているお兄ちゃんは壁に掛かっている時計をちらりと見上げる。
つられて私も見上げれば、そろそろ汽車の時間だ。
自分の荷物を背負い、お兄ちゃんの準備が終わるのを待つ。
そうして準備が整ったお兄ちゃんと2人、宿を出た。
爽やかな風が吹き、見上げればどこまでも続く青い空。
「気持ちの良い天気ですね。」
私を見てそう言ったお兄ちゃんに、言葉なく頷く。
そんな私を見てお兄ちゃんは再び口を開いた。
「じゃあ、行きましょうか。」
これから、新しい生活が始まる。