第1章 ぷろろーぐ
ガラガラと極力音を立てないように玄関を開けるが、物音を聞きつけて同居人が目を覚ましてしまった。
「わりぃな、起こしちまったか?」
「飲みに行くなら一言言っていけヨ」
「鍵開けといてくれてサンキューな」
「・・・・・で。ソレなんアルか?」
「拾いもんだ」
その返答に然程興味もないようで、大欠伸をしながら自分の寝床へと戻って行った。
適当に靴を脱ぎ寝室に布団を引き女を横にする。
フードのついたロングコートに隠された身体はとても華奢で、顔立ちも良く、陶器のような白い肌に気を抜くと魅了されてしまいそうだった。
「緋美虎…」
顔にかかった髪をサラリと払う。
「ヅラに聞かれても忘れてたってのに…」
壁にもたれて、深く長いため息を落とす。
「あーどうすっかなぁ。これから…」
想い巡らせるのは自分の従業員とそして…。
緋美虎に気をつけろ―。
昼間、釘を刺した腐れ縁の坊主コスプレをした男。
(その忠告、聞けそうにさなそうだ…)