第1章 決意
「あんたのとこ、貧乏ってわけじゃないだろ?それどころか、その逆なんじゃない?」
確かに、家は小さかったけど、それでもパパはたくさん儲かっているはずだ。わたしが言えば、喜んで特進科に入れてくれただろう。
『誘いは受けてたんですけど……でも……』
「ふーん、訳ありってこと?」
わたしが押し黙ると、察してくれたらしい。
「これ以上は聞かない方がいいみたいだね。……ならさ、特進科にきなよ」
『……え?』
「母さんなら、きっと許可してくれるって」
『いえ、大丈夫です』
わたしの返答に、来さんが呆れたようにため息をついた。
「なんで?」
『迷惑……だから』
「それって、僕のしてることがってこと?」
来さんの声は完全に苛立ちを含んでいた。
『違います!むしろ、嬉しかったです』
「じゃあ、なに?なんで嫌なわけ?」
『皆さんに迷惑かけちゃうから』
再び、来さんとわたしとの間に沈黙が流れる。
そして、また来さんがため息をついた。
「僕、やっぱあんた苦手」
彼の言葉に、がつん、と頭を殴られたような重さがわたしの中に響いた。
「そうやって、ぺこぺこしてるやつ、嫌いなんだ。あと、いい加減にさ、その敬語、やめてくんない?………イライラする」
それだけ言い残して、来さんが部屋の中に戻っていった。