第8章 雨と幸運
「じゃあ…お世話になります」
「お世話って…大袈裟だね」
クスクスと上品に笑う。
「どうかしました?ボーッとして」
「い、いえ!」
見惚れてたなんて口が裂けても言えない!
「とりあえず行きましょうか」
「はい」
左側に立ち、腰に手を回してくれる。
「濡れると大変なんで、今は我慢してください」
「我慢だなんてそんな!」
むしろ得!
「そういえば、どうして傘なんて持ってたんです?
用意が良いですね」
「まぁ。
天気予報で雨だと言ってましたし、空もどんよりしてましたし、何より僕自身が偏頭痛持ちなので」
「あ、はぁ…」
自分の情報収集能力に嫌気が指す。
「家ここです」
「結構近いんですね」
「図書館からはそうですね。
学校となると少しだけ遠いです」
「あ、そうか。
あ…す、すみません」
「いえ、大丈夫ですよ。
そんなに堅くならなくても」