第3章 私のヒーロー【チョロ松】
翌日、休日が開けて一週間が始まる。
大分仕事にも職場にも慣れてきて、余裕もできてきた。
そこで、私はもう一つ自分の変化に気づく。
私は気が付けばチョロ松君を探していた。
同じオフィスに居るから探せば大抵居るのだけれど、今何をしているかとか、表情とか、ふとした瞬間目で追ってしまっていた。
そんな日が数日続いて、私はあることに気づいてしまった。
それは、彼もまた、私と同じ様に一人の異性を目で追っている事。
それを悲しいと思う自分に気づいて、更に悲しくなった。
私はチョロ松君が好きなのだ・・・
という事は彼もきっと視線の先に居る彼女の事が好きなのだ。
「ひとみさん・・・」
思わず彼女の名前が口を突いて出て慌てていると、すぐそばに居た為、案の定聞こえてしまっていてひとみさんが私に振り返る。
「呼んだ?」
「い、いえ・・・はいっ!」
「ちょっと、どっち?」
ひとみさんはクスリと笑う。
私はとっさに考えて質問をして誤魔化した。
「こ、ここはどうやれば?」
「えっと、ここは・・・」
ちゃんと真面目に教えてくれるひとみさんに心の中で謝る。
そして、説明をしてくれている瞳さんを見つめて思った。
そうよね、ひとみさんは美人でスタイル良くて、気も利くし・・・とても私なんて適わない。
どうしよう、今度ご飯奢らせてねってチョロ松君に約束したけど、こんなことに気づいちゃって、二人きりでご飯なんて行けないよ。
チョロ松君だって意中の人がいるのにそうじゃない異性と二人きりでご飯なんて迷惑に決まってる。
(はぁ・・・お昼、奢ってもらったお返しどうしよう?)