第3章 私のヒーロー【チョロ松】
チョロ松side
やっと決まった就職。
僕は物凄く緊張していた。
内定の電話を貰った時、同じ日に入社する人がもう一人いると聞いていた。
出勤するまでの間てっきり男だと思いこんでいて、怖い人だったらどうしよう、イケイケな人だったらヤだなとか考えていたけどいざあってみると女の子で少し恥ずかしがり屋で、でも話してみると明るい、とても好印象な女の子だった。
(おそ松兄さんが好きそうな感じの子だな・・・)
そう思ったけどそんな子が同僚だなんて絶対に言わない。
連れて来いとか煩そうだし、最悪会社まで押しかけてきてみんなに迷惑をかけかねない。
僕とちゃんは緊張しつつも何とか社員の人達への自己紹介を終え、今日から指導してくれる先輩の元でそれぞれ仕事をしていくことになった。
お互い頑張ろうと声を掛け合って、その先輩の元へ向かった。
僕を教えてくれる先輩はとても優しくいい人だった。
ちゃんの方も気になって様子を窺ってみる。
ちゃんの方は先輩の女性と楽しそうに話をしていた。
するとちゃんもこちらに視線を向けてきた。
そしてにっこり微笑む。
その瞳は大丈夫そうだね、自分も大丈夫だと言っているような気がした。
僕もそういう意味で微笑み返した。
覚える事が沢山で疲れ果てた僕は自分の机にうなだれていた。
先輩は笑いながら僕の肩を叩く。
「覚える事はまだあるぞ~、松野!飯食って勢を付けとけよ!」
先輩はお昼は外食なようで数人の社員と連れ添って出て行った。
他の社員もぞろぞろと出ていく。
ここのすぐ下、一回は喫茶店になっていて個々の社員は専らその喫茶店に食べに行くらしい。
見渡すと残っているのは接客担当の社員が半分と僕とちゃんとちゃんの指導に当たっていた女性社員だけだった。
僕は出勤途中にコンビニでおにぎりなんかを買ってきていた。
その袋をカバンからがさがさと出していると後ろから声をかけられた。
「チョロ松君もお弁当なの?よかったら一緒に食べない?」
振り向くと、薄いピンクのハンカチで包まれた小さめのお弁当箱を片手にちゃんが立っていた。