第3章 私のヒーロー【チョロ松】
「同じく今日から入社の方だったんですね?驚いちゃいました!」
「ぼ、僕もびっくりしたよ・・・僕、松野チョロ松、よろしく」
「私はです。よろしくね?」
それから15分ほど他愛もない話をした。
出身はどこだとか好きなアーティストは誰だとか家族構成だとか。
そこで驚いたのはチョロ松君が六つ子だという事だった。
しかも一卵性で皆同じ顔だということにまた更に驚く。
「三つ子も見たこと無いのに六つ子のうちの一人が今目の前にいるなんて!!今度写真とかあったら見てみたいです!六人で撮ったの・・・あ、ご、ごめんなさいっ、馴れ馴れしくしちゃってっ!」
あったその日に身を乗り出して兄弟の写真がみたいだなんて気安くし過ぎたと慌てて椅子に体を埋めた。
だけど、気にしなくていいよと優しく微笑んでくれるチョロ松君。
本当に優しそうで、さっきまでの緊張はどこえやらだった。
そうこうしていると時計は九時を示す。
社長の号令で全社員、二十名ほどが一斉に立ち上がった。
その音に私たちも慌てて立ち上がる。
「今日は朝のミーティングの前に新しい仲間を紹介する。二人は前へ」
「「は、はい!」」
私とチョロ松君は注目を浴びて小さくなりながら社長のもとへ向かった。
皆の視線を感じて思わず顔を下げてしまう。
するとチョロ松君が少しかがんで私の顔を覗き込む。
「大丈夫?」
小声で私を気遣う声は少し震えていた。
「緊張するけど、がんばろ?」
彼の緊張が伝わってきたからこそ、彼のその言葉に緊張が解きほぐされた。
私も頑張らなくちゃ、そう思えた。