第11章 恋
数日経った日の夜のことだった。
レナは不寝番のため展望台から海を眺めていると、ゾロがやってきた。
「…おぅ……やってるか」
レナが不寝番のとき、ゾロは必ず展望台に来て朝まで一緒にいてくれる。
とは言え朝までずっと話をしているという訳ではなく、ただ二人でぼーっと海を眺めたり、ゾロがトレーニングをする横でレナが本を読むなどして過ごしている。
今回もゾロはすぐにトレーニングを始めた。
ダンベルを上げ下げするゾロの背中を見ていたレナは、いつもとは違う感情が自分の中にあることに気づいた。
(ゾロの背中……好きかも………)
そう思った瞬間、ゾロに対して愛おしさが込み上げてきた。
(何を迷ってたんだろう…ゾロはいつも私のこと、思ってくれてるのに)
ゾロの優しさは、常に感じていた。
(前だってゾロのこと好きだったのなら…躊躇うことなんて何もないよね……)
ゾロのことが好きだと確信したレナは、すぐにでもこの気持ちを伝えたくなった。
次のトレーニングに移るためにダンベルを置いたゾロの背後に移動し…ぎゅっとゾロの身体に腕を回した。
「!?!?」
突然後ろから抱きつかれたゾロは、驚きで言葉も出ず、動きを止めた。
「…私……ゾロが好き」
ゾロの背中の上の方に耳をつけるような格好になっているので、ゾロの心臓の音が聞こえる。
普段は冷静なゾロだったが、心臓が早鐘を打っていた。
自分でも大胆なことをしているのは分かっている。
しかし、ゾロに気持ちを伝えたくて、勢いでこうなってしまった。
ゾロ以上に、レナの心臓の音もうるさかった。
「ゾロのこと、好きかどうかわからないって言ったけど…今は違うの……好きだよ……」
そういって、ゾロの身体に回した腕にぎゅっと力を込めた。