第1章 明暗
「こら。あんまり身を乗り出すなよ?」
「はい!……!わあ…すごい…」
赤、青、緑、黄、様々な色が絡まって光を放つ。夜空に登っていく流星のようなそれは、不意に止まって、花を咲かせた。
ヒュー………パァン…
次々と大輪が咲く花火をうっとりと見つめていると、不意に一際大きな花火が打ち上がった。
「わあ、今の大きかったですね!」
ね?と同意を求めようとして、沈黙。
不自然に途切れた私の言葉を不思議に思ったのか、彼は、ん?と私の方を見た。
「あ、いえ、その…」
忘れてた。
花火大会とは違って、ここは彼の部屋。
…二人しかいない。
そして、花火が瞳に映る彼がとても綺麗で、思わず顔を赤く染め、下を俯いてしまった。きっと、暗闇でもわかるくらいに私の頬は染まっていて、彼も気がついているだろう。二人きり。…二人きり、なのだ。
「あ、の……」
花火はなおも打ち上がる。
私は胸に手を当てて、彼を見つめた。
心臓の音が大きくなるのは、果たしてどちらのものか。
それの答えは、きっともう、分かりきっていた。