第1章 明暗
「んっ…」
「あ、ごめん。冷たすぎたかな」
「大丈夫です、気持ちいい…」
「そう?なら良かった」
そう言って、かれはシャワーを止めて脇に置いてあったタオルを手に取り私の足を拭いてくれる。
「あっ、あの、自分でできますから…っ」
「だーめ、大人しく俺に拭かれてなさい」
「…っ……」
私は風呂淵に腰掛け、彼にされるがままにされると、漸く吹き終えたのか、彼がよし、と呟いた。
「時間は…お、ちょうどいいかな」
「え?」
「花火、見たいんだろ?おいで」
タオルを洗濯かごの中に入れると、彼は私の手をとって廊下へ出た。私は冷涼さを残す足首を気にしながらも、彼に続いた。
「わぁ……!」
リビングへでると、ちょうど今始まったのか、大きく打ち上げられた花火が目に入った。
「綺麗…」
「俺の部屋からも見れるってこと、さっき思い出してさ。これならお前も歩かなくて済むし、花火も見られて、一石二鳥じゃない?」
「そうだったんですか…」
真っ黒の夜空に、沢山の色がキラキラと煌めく。刹那のように短いそれは、何度も何度も目をチカチカさせて、闇を彩った。
「外、出てみるか」
「はい!」
ベランダを開けて、ベランダ専用のサンダルを足に引っ掛け、柵に身を乗り出してあたりを見回す。