• テキストサイズ

(HQ) 夏恋色の空

第4章 ● 重なりゆく空





 ね む れ な い




 さもありなん、と思う。
 好きで好きでたまらない彼にもうすぐ会えるのだ。

 色々諸々想像しちゃうし妄想しちゃうし、もうまったく毛ほども眠くないし、ていうか眠れるわけがない。

 お肌が荒れちゃう、とか。
 クマができちゃう、とか。

 乙女的な観点からいえばデート前の睡眠は必要不可欠なのだけれど。


「でもでもやっぱり眠れないい!」


 じたじたと暴れさせる両足。
 低反発の枕におでこをグリグリして過ごす深夜は、知らず知らずのうちに早朝へと刻を移していた。

 外は明仄。
 彼は誰時。

 閉じたカーテンごしの空が淡墨に色付いていることを知り、いよいよ【そのとき】が差しせまったのだと理解する。

 心ともなく、スマホを手にとった。

 ベッドに入ってから今に至るまで、何度こうしてメッセージアプリを起動したことか。

 いまどの辺を走ってる?
 サービスエリアには寄った?
 運転手さん安全運転?

 聞きたいことが山ほどあるの。でも、それはどれも口実に過ぎなくて。

 話してたいの。
 できることなら四六時中、あなたと言葉を交わしていたい。

 だけど、だけどね、バスでの仮眠を邪魔することはしたくなかったから。

 送信ボタンをタップしようとして、我慢しなきゃって指を引っこめる。この繰り返し。

 ──そんなときだ。

 ぽこぽこ、って通知音。



「! 孝支くん!?」



 たぶん人生最速で飛び起きた。

 慌てすぎて指紋認証が全然うまいこといかなくて、ああもう焦れったい!ってパスコードを入力する。

 急いで通知画面を確認すると、そこに映しだされていたのは──





【木兎さんがハートをおねだりしているよ! ゲームにログインして送ってあげよう!】






 っ木兎!!!

 あいつ、マジ、んんん!

 言葉にならない怒りと怒りと、あと怒りで液晶を叩き割りそうになる。殺意の波動が芽生えたせいで今なら昇龍拳とか使えそうだ。

 ムカつきのあまり既読スルーを決めこんで、スマホを枕元に放り投げた。

 激おこ状態でベッドに突っ伏していると、そこで二度目の通知音。


「もう、今度はなによ!」


 乱暴にスマホを拾いあげて、閉口する。二度目の通知はうちのバカエースから、じゃなくて。

 待ちに待った、彼からの。

/ 41ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp