第3章 ● ハートビート・イヴ
【気をつけて来てね、待ってるね!】
彼へのお返事は震える指で書いた。
最後の感嘆符をハートにするか否かで散々迷って、結局(!)を選んだのは私だけの秘密。んもう、へたれなんだから。
【おー、運転手のじいちゃんに、安全運転よろしく言っとく! そんじゃ、またあとでなー!】
このメッセージへはスタンプを。
小鳥が【またね♡】とさえずりながらウインクしているやつを返した。
へたれなハートよ、彼に届け。なんちゃって。
にへらと顔を綻ばせて見やる窓の外。ヒートアイランドの空はやっぱり満天とはいかないけれど、今日は星散る夜だ。
ほつり
ほつり
都心のネオンラインに負けじと輝く幾つかの星。その瞬きに照らされて、天使の輪っかがくるくる回ってる。
や、ただのスカイツリーだけど。
今のはちょっとポエミーすぎた。
ひとりツッコミを入れて、ひとり自重して。改めて見上げる夜空。彼と繋がっている星空。
本日快晴。
全国的に清々しいお天気になるでしょう。気象予報士さんを信じるならば今頃はきっと、孝支くんの夜空も晴れているはずだ。
(明日も、このまま)
どうか、どうか晴れますように。
捧げる祈り。
星に願いを。
どきどきと震えたままの手でそ、っと窓を閉めて、私はベッドに潜りこむのであった。
ハートビート・イヴ ● 了