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君が笑う、その時まで

第13章 ランチタイム・クラッシュ


◆◇伊織視点

 火神たちの姿が見えて何となくからかっておこうと近づいたのだが、今回は同伴者がいたということを制服の裾が引っ張られるまですっかり忘れていた。

 振り向けば、岸本紗綾の不安げな表情がそこにあった。

(しまった……。)
 私は慌てて紗綾が落ち着ける場所に連れていこうと決めた。

 その際、私は肩越しに火神の様子を窺った。
 今はまだ3人掛かりで火神を抑えているものの、いつまた火神が殴りかかってこようがおかしくはない。
 ましてこんな人混みの中にぶつかっていった3人だ。体力は相当削られているだろう。

(こりゃ早く撤退した方がいいだろうな…3人の為にも)

「伊織ちゃん……」
「あ。ごめんね紗綾、怖かった?」
「そ、そうじゃないけど……パン、無理そうだね」
「んー…これじゃあどのパンがあるのか分からないしね。
 とりあえずもう少し静かな場所で休もっか」

 私は紗綾の手を引いて踵を返した。
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