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君が笑う、その時まで

第13章 ランチタイム・クラッシュ


◆◇火神視点

「あれまー。随分と揉みくちゃにされたようで…」

 アイツ――大前伊織は俺を頭のてっぺんからつま先までじっくり見まわした後、にやりとわらった。

「さすがのバスケ部さんも”ゴール”には辿り着けないようで」

コイツ……俺に恨みでもあるのかってくらい顔を合わせるたびにバカにしてきやがる。
 毎回毎回…イラつくったらありゃしねぇ!

「テメっ――」
「わーっ、待て火神!」
「落ち着けって!」
「実際俺たちはパンを買えていないわけだし……」

 寸でのところで降旗、河原、福田に止められる。

 こうしている間にも大前は俺を見てニタニタと笑っている。まるで他人の不幸を楽しんでいるかのように。
 マジでムカつくぜ。いつかぶん殴ってやりてぇわ……。

 
 そんな大前の肩越しからひょっこりと別の顔が飛び出してきた。

「「!」」

 目が合う、刹那。

 そいつは大前の背中に慌てて隠れた。

「伊織ちゃん……」
「あ。ごめんね紗綾、怖かった?」
「そ、そうじゃないけど……パン、無理そうだね」
「んー…これじゃあどのパンがあるのか分からないしね」

 とりあえずもう少し静かな場所で休もうか。背後のそいつを気遣ってか、大前は踵を返してもといた場所へ戻ろうとした。

 俺の側を素知らぬ顔で通り過ぎる。


 瞬間、背筋がぞっとした。


「ッ!?」

 思わず息を呑む。どうやら驚いたのは俺以外にはいなくて、降旗たちは不思議そうな目で俺を見ていた。

「どうした火神?」

「いや……何でもねぇ」

 否。確かに感じた。
 明らかにさっきまでとは違う、底冷えするような殺気じみた何かを……。
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