第8章 お手伝い

◆◇笠松視点
　今日は練習試合。といっても試合前には基礎練習があるため、いつもと同じようにメニューをこなしていく。


　黄瀬はいない。

　何でも同じ中学でバスケ部の知り合いがいるといって、自ら誠凛高校の案内役を買って出て、先ほど体育館を飛び出していった。

その時の周囲の冷ややかな視線が何を言おうとしているのか、俺には察しがついた。

　アイツは一向に練習に対して真剣に向き合おうとはしない。前に注意したことがあったが、「そんなの俺には必要ないッス」と軽く一蹴された。

　確かにアイツは実力がある。それでもキセキの世代だからって練習をサボっていい事にはならない。1年でレギュラーになるほどの実力こそ認めるが、どこかアイツは海常高校バスケ部を舐めきっている節がある。

　どうしたら黄瀬を叩き直せるか、と考えていると、突然森山がコートを抜け出し出入り口へ駆けていくのが見えた。


　そこで見知った顔を見つけた。

「あれは……――」