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君が笑う、その時まで

第31章 Let's試食会


◆◇伊月視点

木「もしかして君、前に俺と会ってないか?」

 木吉の一言に大前さんは小さく肩を震わせた。
 周りのヤツらは気付いていない。傍にいる黒子ですら彼女の異変に気付いた様子も無く木吉のことを聞いている。

 彼女は頑なに木吉との関係を否定する。
 それが俺にはかえって不審に思えた。

伊織「見間違いなんじゃないですか?少なくとも私は初めてお会いしますけど」

 涼しげな顔を見せているが、その実焦っているようにも見えた。
 なるべく自然に表情を繕ったつもりであっても不安はちゃんと声音に出ている。

 案の定木吉はお決まりの自己紹介で大前さんをドン引かせ、見事日向につっこまれた。
 一部始終を見守る彼女は呆れたように苦笑している。

伊織「あ、あの。木吉先輩て……
伊「あ、ああ。悪いな。アイツ少し変わってるんだ」
伊織「はぁ…」
 その表情は呆れていたし、安堵してもいるようだった。

 そんな表情も木吉が名前を聞いてきたことで再び強張る。
 
 昔、木吉と何かあったのか?
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