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君が笑う、その時まで

第31章 Let's試食会


木「なら俺の見間違いだな」
日「ってオイ!結局お前の見間違いかよ」

 あーびっくりしたと盛大に溜め息をつく日向先輩。周りもなんだと緊張を解いて和やかな雰囲気になる。

木「疑って悪かったな。俺は2年の木吉鉄平。このー木なんの木の「木」に大安吉日の「吉」で木吉だ」
伊織「はい?」
木「んでもって鉄アレイの「鉄」に――」
日「木吉ウザイ。黙れ」
木「何だよ日向。俺はただ自己紹介してるだけだぞ?」
 
 それでますます……端から見ていれば何がそんなに刺激になったのか分からないほどに、日向先輩が苛立ち木吉先輩に当てつけている。
 さっきまで張り詰めていた緊張感は微塵もない。

 私は隣にいた先輩に聞いてみることにした。

伊織「あ、あの。木吉先輩て……」
伊「あ、ああ。悪いな。アイツすこし変わってるんだ」
 伊月先輩が苦笑する。

伊織「……はぁ。」
 伊月先輩の言葉に納得しつつ、ちらりと近場の喧噪(けんそう)を覗いてみる。

 偶然、木吉先輩と目が合った。彼はにっこりと笑いかけた。

木「君は何て名前なんだ?1年か?」
伊織「え……」

 どっと冷や汗が吹き出し、口元がひくひくと痙攣(けいれん)し始める。

伊織「……大前伊織、1-Eです」
木「そうか、大前かー!よろしくな」

 どうにか答えると木吉先輩はまるで初めて会ったかのように手を差し出してきた。
 
伊織(本当に天然なんだな、この人……。)
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