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君が笑う、その時まで

第31章 Let's試食会


 ――事の始まりは1時間前に遡る。


 学期最後のホームルームを終え帰りの支度をしていると、背後からつんつんと肩を叩かれた。
 振り向けば、黒子テツヤがそこにいた。

伊織「……黒子。用があるならせめて一声かけてくれないかな」
黒「すみません。一応廊下から呼んだつもりでしたが」
伊織「あ。そりゃ悪かったね」
 謝罪の言葉を口にして仕切り直し、話を聞くことにする。
伊織「で、何の用?」
黒「実は――」

 黒子の説明によると、バスケ部で明日から合宿があるという。
 場所は海近くの民宿。宿泊費は破格の値段で済んだとのこと。
 ここまで聞く限り、さほど問題視するような話ではない。

伊織「海近くでそんなに安い費用で合宿できるなんてよかったね」
黒「実は安く抑えるために食事を抜いたようでして、食事はカントクが作るようなんですが……」

 黒子の声音が次第にすぼまっていく。遠回りな説明であったが、何となく察しがついた。

伊織「まさかそのカントクさんが全く料理ができない、と?」

 黒子はコクリと頷いた。

黒「これから“試食会”なんですが、できれば一緒に来てくれませんか?」
伊織「は?」
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