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君が笑う、その時まで

第29章 ひとつの確信


 とりあえず黒子君の事は明るい展望が見えてほっとした。
 私たちはたわいない話をしながら楽しい時間を過ごしていく。

 鉄平と話していて、ふと思うことがあった。

 入院しているはずの鉄平が――いくら私が試合後にメールで結果を送っているとはいえ――選手ひとりひとりの動きを詳しく知るなんてどう考えてもあり得ないことだった。

リ「――それにしてもインターハイ予選のこと、よく知ってたわね」
木「ああ、そのことか」

 鉄平はすすっていたドリンクを置いてにっこりと笑った。

木「見舞いに来た子から聞いたんだよ」
リ「見舞いに来たって前にも言ってた?」


 前に鉄平から一度言われたことがあった――


木「――なぁリコ。最近おもしろい子が来るんだ」
リ「おもしろい子?」
木「ああ。どっかの中学生らしいんだが、高校バスケのことよく知ってんだ」
リ「へぇー。その子バスケ部かしら」
木「さあな。ただ……」
 不意に鉄平の表情が強張ったように見えた。
リ「?どうかした?」
木「その子、少し変わってるんだ」
リ「変わってるって?」
木「んー、なんつーか…。わざと嫌われようとする感じ、とかかな」

 そう言う鉄平はどこか遠くを見ているようだった。

木「本人は否定するんだが、バスケが好きなのにバスケを諦めようとしている――それがどうしても放っておけなくてな」

 バスケが好きなのにバスケを諦めようとしている?それはまるで――

リ「日向君にそっくりね」
木「おお!言われてみればそうかもな」

 納得して表情を緩める鉄平に私自身つられて笑いをこぼしたっけ。

 昔を思い出して、ついくすっと笑ってしまった。

リ「まったく。ホント鉄平って変わってるわね」
木「ん?どこがだ?」」
リ「ま。よく言えば人を引きつける何かがあるってことよ」
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