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君が笑う、その時まで

第29章 ひとつの確信


◆◇リコ視点
 鉄平が戻ってきてからいろいろなことがあった。

 先日の火神君との1on1。
 今日の練習試合に1年生だけ出したこと。

リ「何を企んでいるのかしら?」
木「何でみんなそう人聞きの悪いこと言うかな」
 鉄平は椅子にもたれかかり、呆れたようにぼやいた。

 鉄平曰く1on1ではお互いの実力を知りたかったとのことで、今日の試合はというと――

木「――黒子君に知ってほしくてな。今の限界をさ」
リ「黒子君の……限界?」

 ――彼のバスケはよく言えば周りを活かすスタイル。他の4人次第で強くも弱くもなる。

 けど、悪く言えば――

木「人任せとも言える」

 確かに今までの試合を振り返ってみても黒子君はパス回しに特化した選手として誠凜のチームオフェンスに重要な役割を果たしてきたとはいえ、彼自身シュートを決めて得点することはなかった。
 それはたとえるなら潤滑油のようなもので、全体の動きに勢いづけることはできても単独では何もできないのだ。

 これまでは火神君という強力な〈光〉によって黒子君のミスディレクションは大きな効力を発揮してきた。

 けれども桐皇戦では、2人の力が一切通用しなかった。
 そして残りのインターハイ予選も……。

 今日の試合を見ても黒子君は火神君に一切パスをしなかった。

木「この壁を破るために必要なのは――今のスタイルを捨てることだ」

リ「捨てる……?」

 ミスディレクションをつかったパス回しのスタイルを……?

木「そして"つくる"。新しい彼のバスケを」

 

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