第27章 期待と怠惰のあいだ
伊織『……分かりました。彼を試合会場まで連れてくればいいんですね?』
電話の向こうから盛大な溜め息が聞こえてきた。
今「もちろん試合が終わる前までな。できればインターバルまで」
伊織『なんか条件厳しくなってませんか?』
電話の向こうの彼女は今や相当な呆れ顔をしているかもしれない。
普段だったら茶化しのひとつやふたつ入れたいところだが、状況が状況なだけに端的に話を済ませる。
今「とにかくや。ワシらも試合前で青峰ばっかしに構っていられへんし…」
「なぁ?」と畳みかけてからさらに沈黙を重ねること数秒。
伊織『……努力はします』
そう言って彼女は電話を切った。