第27章 期待と怠惰のあいだ
青「……んなことねーよ」
コイツはまるで分かっちゃいねぇ。
俺が初めから試合に出ていたらどっちが勝つか分かりきっちまうだろ。
そうなったら、相手の選手はどうなる。
戦意喪失な上に大量失点でそれこそ試合がつまらなくなる。
青「――要するに、俺は最後の切り札ってワケ」
?「へぇ。随分自信があるんだね」
青「ハッ。俺に勝てるのは俺だけだからな。
たとえどんなに強いヤツだろうが俺には敵わねぇよ」
ソイツは納得したのかしてないのか分からない顔で「ふうん?」と頷いた。
?「じゃあ、君に勝てたら君は最後の切り札じゃなくなるわけだ」
青「は?」
突拍子もなく訳の分からねぇ事を言い出したソイツに俺は目が離せなくなっていた。
ソイツは俺に背中を向けるようにして鞄の中をがさごそとあさりだした。
その間俺は上体を起こし、これから一体何が起こるか気怠い眼差しで見つめていた。
?「君に勝ったら君は試合に出てくれるんだね?」
ソイツはすっくと立ち上がり、俺の目の前にバスケットボールを突き出してきた。
……意味が分かんねぇ。
じろりと睨み付けると、そいつは涼しげな表情を返した。
?「じゃあさ、今から軽い調整程度に3本勝負しない?」
――君が勝ったら試合に出るかどうかは君が決めればいい。
――ただしこっちが勝ったら今すぐに試合に出ること。
どう?と提案してきたソイツに内心ばかばかしいと思いながら、俺はテキトーに時間を潰すために勝負に乗ることにした。