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君が笑う、その時まで

第4章 最悪の初対面


◆◇伊織視点

 どういうわけか私はバスケ部の皆さんに囲まれている。動物園の檻の中の動物になった気分だ。


「君、もしかして新入生?マネージャー志望??」
 猫口の先輩が声を弾ませて尋ねてきた。

「あなた1年生よね?名前は?」
 部の中で紅一点である彼女はマネージャーらしくも見えたが、私の脳裏にはいつか見たバスケ部のポスターがちらつき、瞬時に彼女がバスケ部監督であることを察した。
「……大前伊織、です」
「大前さんね。覚えたわ。で、どうしてあんなとこで見てたの?もしかしてバスケ経験者?マネージャーやってみない?」
「急に言われましても……目立つの嫌いなんで。体育の授業でやったことありますけど。マネージャーはしません」
「うそ、即答!?」
「てか、ちゃんと答えてるよこの子!」
「すげえ……」
 どれほど喚かれようが驚かれようが、私は眉をピクリと動かすことなく平然と構える。
 
「あなた……本当にバスケ経験者じゃないの?」
こほんと咳払いして監督さんが私に向き直る。その目つきは険しかった。

「あなたの指数、正直言って女子の比率じゃないわ。特に脚力はずば抜けている…!持久力といい瞬発力といい、バスケやってたら相当強いわ」
「マジで!?」
 監督の言葉に周りが騒然となる。
 周りの活気に反比例して私の気持ちは冷めていった。
 この場から今すぐ立ち去りたいとすら思っていた――まさにその時。






「――お前、強いのか?」
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