第4章 最悪の初対面
◆◇伊月視点
見ない顔だった。おそらく新入生だろう。
マネージャー志望…というわけではなさそうだ。彼女は敢えてコートからは死角の位置に立って試合を眺めていた。試合が終わった今でも俺たちに話しかけるわけでもなく、ギャラリーから見下ろしている。
その視線はコートを見ていながらどこか遠くを見ているようだった。
「おい伊月どうした?ぼさっとして」
日向の一声に俺の意識は現実に戻された。
「ああ…ギャラリーから見てた子がいてさ。多分新入生なんじゃないか」
俺は日向に彼女のことを伝えた。すると、どこからともなく相田が「新入生!?」と目を輝かせて割り込んできた。
「で伊月君、その新入生はどこっ?」
俺はさっきまで見ていたギャラリーを見やる。そこに彼女の姿は無くて、つられて見ていた日向や相田は眉を顰めるばかりだ。
「って、どこにもいねぇじゃねぇか」
「おかしいな…さっきまでいたんだけど――」
2階にいないとすれば、おそらく――
すぐさま1階を見やる。
俺の目は、階段を降りて入口へと向かう彼女の姿を捉えた。
「ほら、あの子だよ」
そう言って指をさす。
2人は俺の指さす方を見やる。相田の目がらんらんと輝き、すぐさま声を張り上げた。
「ねぇ、そこのあなた!」
相田の一声にその場にいた全員が動きを止める。勿論彼女もそのひとりで、驚いた表情で俺たちを見ていた。