第21章 名前(高尾視点)
真ちゃんがすっかり黙り込んじまったのを<視>て、少しからかい過ぎたかなんて思いつつ、俺はチャリアカーを漕ぎだした。
(大前伊織ちゃん、かー……)
俺は真ちゃんや黄瀬みたいにいじられはしなかったけど、彼女の別の表情を見れた点では得だったのかもしれない。
だいたい初対面のヤツに「下の名前で呼んで」と言われたら、たいがいは「えー」と嫌な顔一つしてためらうのがフツーだ。
それなのに彼女は嫌な顔せず素直なくらいに「和成君」と呼んでくれた。
そんな彼女がカワイイなんて思った。
ま。俺以外にも彼女に興味津々なヤツはいるわけで。
真ちゃんにかまをかければすぐに態度に出してきた。
まったく分かりやすいヤツだぜ、ホント。
だけど肝心のことは言わないのな。
(ったく、一体何を訊こうとしてたんだよ?)
気になると言えば、なる。
かと言って真ちゃんがこれ以上話してくれるとは到底期待できねーし。
俺の方からも積極的にいってみるとすっか。