第20章 既視感(緑間視点)
大前伊織――彼女とは店で会ったのが初めてであるのに、どこか懐かしさも感じられた。
(……まさかな。)
根拠のない錯覚だと思った。
だが、彼女が慌てて席を立とうとした時俺は咄嗟に彼女を引き留めた。
「待つのだよ」
なぜあの時そんなことが言えたのか、正直今でも分からない。
彼女と同じテーブルについて彼女の仕草や表情から目を離せずにいたなど……口が裂けても言えない。
黄瀬がバカみたいに叫んで(まぁ、実際バカなのだが←)それを自分の掌の上で転がすかのように楽しんでいる時もそうだったが、彼女はどこか斜に構えるきらいがある。
自分の手の内を決して見せようとしない態度も、
冷静であり冷淡なその目つきも、
初めて会った気がまるでしないのは俺自身分からない。