第3章 火薬庫内は火気厳禁、の段。
一瞬にして火薬庫の中が明るくなる。
「ま、まずい…!」
「うわぁぁぁぁぁ」
「伊助! 固まってる場合じゃない! 早く外へ出ろ!!」
平助が大声を出し、伊助は一目散に駆け出す。
火薬庫に張り巡らされた緊急用の火縄に火がついてしまったのだ。
「椿くん…!」
「なになになに…?!」
突然のことに驚いて椿は体が動かない。
するとお腹に土井先生の腕が回り、ぐい、と引っ張られたかと思うと一瞬にして火薬庫の外に連れ出される。
と、次の瞬間。
ドッッカーーーン!!!!!
物凄い音を立てて、火薬庫が木っ端微塵に吹き飛んだ。
「ほ、ほへー…」
伊助の口は開いたままふさがらない。
「う、うそ…」
土井先生の片腕に抱えられていた椿は、体から力が抜けてずるずるとその場にへたり込んだ。
「あーあ…またやっちゃいましたね…土井先生」
「……あぁぁぁぁ」
平助の言葉に、土井先生は頭を抱えた。
「…また…?」
「前にしんべヱがかがり火を持ち込んで…今日みたいに爆発させたことがあったんですけど…まさか椿さんの顔から火が出るとは思いませんでした」
伊助の説明に、椿は一瞬にして青ざめた。
「半助~~! 一体なにごとじゃ?!!!」
火薬庫の大爆発の音はすさまじく、耳の遠い学園長もすぐにすっ飛んできた。
「学園長…えーっと、見ての通り…」
「火薬庫、吹っ飛んじゃいました」
なんて言おうかと考えあぐねていると、伊助があっけらかんと答えてしまった。
「それは見ればわかるわい!! どうしてこうなったんじゃ!」
「それは…」
「それは?」
「「「それは…」」」
土井先生、平助、伊助の視線が椿に突き刺さる。
「「………」」
土井先生と平助は何とも言えず二人ともあさっての方向を見た。
「ええい! はっきりせんか!」
答えない二人を尻目に伊助が手を上げた。
「火がついちゃったんです」
「それはわかっておる! なぜか、と聞いておるんじゃ」
「椿さんの顔から火が出たんです」