第11章 楽しいこと

危うく目の前の乳房に触れてしまいそうで身体を起こせずにいると、跡部さんが野薔薇の手首を結わえていたネクタイを外した。

よろけた野薔薇が俺の上に四つん這いになる。

近い。

真上にある野薔薇が目を見開く。

「ふぁぁっ」

くちゅ、と濡れた音がする。

「ホラ、お前に見られて感じてるとよ」

かざされた指がぬるぬると光る。

くちゅ、ちゅ、ぬちゅっ

静かな保健室に音が響き、野薔薇が小さく喘ぐ。

ハッとして隣を、見ると鳳は口を開けて寝ていた。呑気かよ。起きろよ、てか、起きるなよ。

混乱する頭で野薔薇を見上げる。

声を殺す野薔薇が顔を切なげに歪める。

こんなの、無理だろ。

肘をついて下がるように少しだけ身を起こす。頬に手を伸ばして口付けると、舌が入ってきて激しいキスに完全に目が醒める。

「んっ…はぁっ、あっ」

目の前の野薔薇は今まで見たことのない顔で、俺はさらに混乱に飲まれていく。

ベッドについていた手が俺の肩にかかる、少しの体重を感じながら唇を味わった。

「ふぁあっあああっ」

野薔薇がひときわ大きく跳ねて、声を上げた。