第11章 楽しいこと
「あッ…ちょっと、やめっ」
「静かにしろ、二人とも起きちまうぞ」
「うっ…んっ…」
囁くような声に身を起こそうすると、下半身が重かった。
「…?」
目を擦り言葉を失う。
俺の上には制服のシャツをはだけさせられ、背後から胸を愛撫される野薔薇がいた。
手首をネクタイで縛られ、潤んだ瞳と目が合った。
「…っ」
言葉が出ないでいると、大きく瞳を見開いた野薔薇が小さく悲鳴をあげた。
「いやぁっ…わか、し…見な…い…でっ…んんっ」
頬を紅潮させ、表情を乱す野薔薇。夢にしてはリアルだ。
足元から跡部さんの声がした。
「よう、お目覚めか、若」
「…跡部さん…?」
まだ脳みそが状況に追いつかない。
「やめっ…景吾ぉ…んむっ」
振り返る野薔薇の顎を掴んで深いキスをする跡部さん。
それよりも初めて見るあられもない姿と表情に釘付けになる。
何やってるんだとか、何してるんだとか、そんな気持ちよりもただ見惚れている自分がいる。
肩までの髪がさらさらと揺れて、首についたキスマークが目に入った。
「景吾…」
蚊の鳴くような声にどきりとする。
「へぇ、お前、ずいぶん素直じゃねぇの」
言われてから下半身が反応していることに気付く。
膝立ちの状態で跨る野薔薇の太ももが当たっている。
「ホラ、野薔薇、若が苦しそうだぜ」
跡部さんの言葉に野薔薇が眉根を寄せた。でも、決して嫌そうじゃない、ただ不安そうに見える。
こんな風に表情を変えるところを初めて見るのでまた動揺した。
何も言えずにいると、野薔薇は縛られたままの両手で俺のベルトに手をかけた。
「あ、ちょっ…やめ」
身を起こそうとしたが起き上がると野薔薇が近過ぎる。
「ふぁっ…ああっ」
跡部さんに首を舐られた野薔薇の身体がビクリと動く。同時に手がベルトより下の俺自身に触れて、俺までビクリと反応してしまった。
「コイツ、首が弱いんだぜ」
流し目で笑う跡部さんは何処までも優雅で、ココアにマシュマロを入れると美味しいんだぜ、とでも言うように自然だった。