第9章 友情と愛情
「腹へったな」
「今日はお弁当ないの?」
「ジローの奴に食われた」
「ええっ」
「食堂行く・・?」
「眼鏡なしのお前とか?」
「あー…」
「仕方ねぇ、樺地に頼むか」
携帯をむにむにと操作すると間もなく樺地くんが生徒会室に購買のパンを買ってきてくれた。
「悪いな、樺地」
「ウス」
「樺地くん、ありがとう」
「ウス」
無表情だから、なんとなく親近感がわく。
「お前もここで食ってくか?」
「いえ…今日は教室で」
「そうか。御苦労だったな」
「ウス」
あっさり戻って行ってしまう。良い人だなぁ。
「景吾、何食べる?」
「カルツォーネ」
「え、そんなの売ってるの?」
コンビニパンではなく、きちんとパン屋さんの入った氷帝学園ではパンはいつもとても人気で、人が多いので滅多に行かない。
樺地くんすごい。
「あ、あった」
カルツォーネは手に取ると温かくて、景吾が私の手の中にあるまま齧り付いた。
「わ」
口元に伸びたチーズがおいしそう。
「おいしい?」
「ああ、うまいな」
「景吾がほめるなら、おいしいんだね」
「まぁな」
手元のパンを齧ると中は暖かく、またチーズが伸びた。
「んっ」
「お前…食べるの下手か」
ふっと笑って口元を指でぬぐわれる。
「おいしい」
言うと景吾が少し固まる。景吾が私をじっと見たり、一瞬緊張したような顔になる時、だいたい私は笑っている。
そのまま頬を撫でられる。
くすぐったくて首を竦めると、抱きしめる腕に少し力が入った。
好き。
「猫みてぇだな」
「猫って、あんまり近くで見たことない」
「そうか」
「なんか、動物と上手く仲良くなれないんだよね…」
「次のオフは乗馬でもしに行くか」
「えっ」
「馬は嫌いか?」
「よく分かんない」
「そうか、空けておけよ」
「うん」