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【テニスの王子様】王様と私【跡部景吾裏夢】

第9章 友情と愛情


鳳に肩を貸すように担ぎ、樺地を呼ぶために指を鳴らそうとすると、鳳が小さく呻いた。

「なんだ?」

「跡部さん…」

次の言葉を待つ。

「跡部さん、俺、野薔薇の事好きだったんです」

驚いて鳳の肩を落としてしまい、鳳が膝をついた。

「すみません、言わないでおこうと思ったんですけど、今日跡部さんとのこと聞いたら、俺、抑えきれなくて…」

こんな大男の懺悔に耳を傾ける俺様は聖人だな、と思ったが『抑えきれなくて』という言葉に反応する。

「抑えきれなくて…?」

「……」

「鳳」

「キス、しちゃいました」

言い終わるや否や鳳を殴り飛ばしていた。

鳳は下を向いたまま「すみません」と小さく言った。

「いまのでチャラにしてやる」

拳がズキズキと痛む。感情に任せて暴力を振るったことをほんの少しだけだが後悔しながら生徒会室の扉を開けると、男子生徒の後ろ姿と、机に腰掛ける女子生徒の姿が目に入った。

ったく、神聖な生徒会室で何してやがんだ。見るとそれが若と野薔薇だと気付いた。

スッと血の気が引く。

「おい」

野薔薇が若の肩越しからひょいと顔を出した。

自分でも驚くほど低い声が出た。

「跡部さん」

若が振り返る。なんつー顔してやがる。

「若、お前」

「こいつのこと、大事にしてくださいね」

俺の言葉を遮り苦しそうな顔をした若にさっきの鳳が重なる。

「言われなくてもそのつもりだ」

若が逃げ出すように生徒会室を出ていき、それを見送るように扉を閉め鍵をかけた。

机に腰掛ける野薔薇に衣服の乱れがなくてホッとする。でも身体は言う事を聞かなかった。

手の甲で唇を拭うような仕草に、キスされたのだと気付く。

「け、ん、むぅ」

野薔薇が悪いわけじゃない。あいつらとは幼馴染だ。コイツが警戒するはずもない。

気持ちに身体がついてこない。バラバラになっちまったように、ただキスを降らせる。

「ごめん…」

野薔薇の言葉に、怒ったら良いのか謝ったら良いのか解らなくなる。

「お前は…何が悪いと思って謝ってんだ?」

そうだ、それが知りたい。

「景吾を、傷つけて、ごめん」

確かに、傷付いたかもな。

もう一度、唇を奪うようにキスをする。舌を差し込むと少し苦しげに唇を開く表情がそそった。
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